源泉徴収票をマジメに確認し、iDeCoとふるさと納税の減税効果について考える

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 年末に勤め先から令和3年分の給与所得の源泉徴収票が手渡された。最近になってようやくお金のことを真剣に考えるようになったので、まじめに読み解いてみる。
 さらにそこから、iDeCoとふるさと納税の減税効果を確認する。

この記事を読んでわかること

  • 源泉徴収票の読み方
  • 所得税額の計算方法
  • iDeCoの減税効果(法的根拠メイン)
  • ふるさと納税の減税効果(法的根拠メイン)

源泉徴収票

 主な見どころは以下の4つ。金額としては最上段に書いてある項目。

  1. 支払金額:世間一般で言うところの「年収」のこと。
  2. 給与所得控除後の金額(調整控除後):支払金額から給与所得控除を差し引いたもの
  3. 所得控除の額の合計額
  4. 源泉徴収税額:徴収された所得税額

 そもそも勤務先が勤務者に対し源泉徴収票を交付するのは、所得税法(第226条)でそう定められているから。
 源泉徴収票の記載事項は所得税法施行規則(第93条)で定められているが、「これだけの給与の支払いの中から、これだけの所得税を徴収しましたよ。」と勤務者に報告するというのがメインテーマだと思う。

 そしてその所得税の計算順序も所得税法(第21条)で定められている。
 要約すると以下のとおりで、最初に挙げた見どころ4つは、この手順をなぞっていると言える。

  1. 所得の金額を計算する。
  2. そこからいろいろ控除して課税対象額を算出する。
  3. 所得税の額を計算する。

4つの見どころの要点を以下にまとめておく。

支払金額

 1年間の給与・賞与・各種手当の合計額。ただし通勤手当や旅費は非課税なので含まない。(社会保険料の計算では含める。ややこしい。)

給与所得控除後の金額(調整控除後)

 事業所得(製造業、サービス業等を営むことにより得られる所得)は、事業による総収入から必要経費を除くことで算出される。
 給与所得控除は給与所得における必要経費みたいなもの。つまり給与所得=給与収入ー給与所得控除。
 この算定方法(定義)は、所得税法(第28条)で定められている。

 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。

所得税法第28条第2項

 で、この給与所得控除って実際いくらなのよ?ってのも所得税法(第28条)に書いてある(下表)。
 こういう細かいことも法律で定めているんだな。施行令とか施行規則で扱いそうな気がするが。内閣や大臣が決めて良いレベルのものではないということか。

 そして収入850万円で頭打ちってけっこうシビア。まぁそもそもサラリーマンの必要経費が収入に比例するのか、微妙ではあるが…。
 給与収入が660万円未満の場合は、なぜか別の表(所得税法別表第5)を適用する(所得税法第28条第4項)。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
所得税法第28条第3項

 念のため自分の源泉徴収票を検算してみると、給与所得控除後の金額は、ちゃんと所得税法どおりになっていた。収入金額×○%の計算は小数以下切り上げっぽい。

所得控除の額の合計額

 恐らく最難関。今さらながら「控除」とは、「一定の金額を差し引く」こと。どこから差し引くかと言うと、「給与所得控除後の金額(調整控除後)」から。給料が減るとかそういうことではなくて、課税対象とする額を減らしてくれるということ。つまり税金を減らしてくれるということで、納税者にとってはありがたいもの。
 扶養している家族がいるとか、ひとり親であるとか、納税者の個々の事情に極力合わせた控除ができるように様々な条件が設けられている。だから最難関。
 その条件は、以下のものが所得税法の第72条から第86条で定められている。

  1. 雑損控除
  2. 医療費控除
  3. 社会保険料控除
  4. 小規模企業共済等掛金控除
  5. 生命保険料控除
  6. 地震保険料控除
  7. 寄附金控除
  8. 障害者控除
  9. 寡婦控除
  10. ひとり親控除
  11. 勤労学生控除
  12. 配偶者控除
  13. 配偶者特別控除
  14. 扶養控除
  15. 基礎控除

 ようやくiDeCo(小規模企業共済等掛金控除)とふるさと納税(寄付金控除)が出てきた。それぞれの控除内容を確認する。

小規模企業共済等掛金控除

 居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払つた場合には、その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

所得税法第75条第1項

 前項に規定する小規模企業共済等掛金とは、次に掲げる掛金をいう。

 確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)第三条第三項第七号の二(規約の承認)に規定する企業型年金加入者掛金又は同法第五十五条第二項第四号(規約の承認)に規定する個人型年金加入者掛金

所得税法第75条第2項第2号

 つまりiDeCoの掛金(個人型年金加入者掛金)は、全額を控除(課税対象額から差し引く)してもらえるということ。ただし、実際に減税されるのは、掛金×所得税率(後述)となる。
 じゃあiDeCoに所得全額ブッ込んだら所得税ゼロ円! \(^0^)/ゎーぃ …なんてことになるはずもなく、確定拠出年金法(第69条)と同施行令(第36条)で拠出限度額が定められている。自営業者は68,000円/月とか、公務員は12,000円/月とか。
 iDeCoの掛金は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」の内数として記載される。

 私はiDeCoはまだ審査中なので、何かしら発見があれば追記します。

寄付金控除

 居住者が、各年において、特定寄附金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

 その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額)

 二千円

所得税法第78条

 つまり寄付金(所得の40%を上限)から2,000円を差し引いた額を所得から控除できるというもの。実際に減税されるのは、この額に所得税率(後述)を乗じたものとなる。

 所得3,300,000円の人で試算すると、所得の40%の1,320,000円まで寄付できて、減税額は、所得税率が20%(後述)なので、(1,320,000-2,000)×20%=263,600円
…デカくね?「さとふる」とかによくある寄付金シミュレーションではこんな高額にはならんぞ? て言うか、ふるさと納税は、寄付金は自己負担2,000円以外は全額返ってくるはずじゃ?所得税率の20%分は返ってくるとしても残り80%分はどうなる?

 さらにもう一つの疑問が湧いた。そもそもふるさと納税分の所得の控除を、勤務先はどうやって知り得るのよ?ということ。

 結論から言うと、寄付金控除は勤務先は知り得ないし、かと言って生命保険みたいに控除証明書を提出することで勤務先に伝えて、年末調整してもらえるものでもない。確定申告するしかない。
 そしてもう一点、確定申告ではなくワンストップ特例という手もあるが、その申請をした場合は、所得税からの控除は行われず、全額が翌年分の住民税から控除される。私が抱いた数々の疑問には、住民税が絡んでいそうだな。

 ↓がその寄付金に対する住民税の控除に関する地方税法の条文。

 道府県は、所得割の納税義務者が、前年中に次に掲げる寄附金を支出し、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が前年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の三十に相当する金額を超える場合には、当該百分の三十に相当する金額)が二千円を超える場合には、その超える金額の百分の四(中略)に相当する金額(中略)を当該納税義務者の第三十五条及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。(以下略)

地方税法第37条の二 第1項

 市町村は、所得割の納税義務者が、前年中に次に掲げる寄附金を支出し、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が前年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の三十に相当する金額を超える場合には、当該百分の三十に相当する金額)が二千円を超える場合には、その超える金額の百分の六(中略)に相当する金額(中略)を当該納税義務者の第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。(以下略)

地方税法第314条の七 第1項

 つまり寄付金(所得の30%を上限)から2,000円を差し引いた額に、道府県と市町村合わせて10%乗じた額を、所得割(住民税のうち、前年の所得に比例して徴収される部分)から控除できるということ。これを一般に「基本控除額」という。
 同じ寄付に対して、所得税率分の他に、住民税は10%控除されることはわかったが、所得税の控除と足してもまだ100%にはならんぞ?(所得3,300,000万円の人の場合、残り70%)

 ↑の地方税法第37条の二の第1項の中略部分に書いてあるが、住民税にはさらに「特例控除額」というのがある。以下がその条文。

 11 第一項の特例控除額は、同項の所得割の納税義務者が前年中に支出した特例控除対象寄附金の額の合計額のうち二千円を超える金額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た金額の五分の二(中略)に相当する金額(当該金額が当該納税義務者の第三十五条及び前条の規定を適用した場合の所得割の額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、当該百分の二十に相当する金額)とする。

 当該納税義務者が第三十五条第二項に規定する課税総所得金額(以下この項において「課税総所得金額」という。)を有する場合において、当該課税総所得金額から当該納税義務者に係る前条第一号イに掲げる金額(以下この項において「人的控除差調整額」という。)を控除した金額が零以上であるとき 当該控除後の金額について、次の表の上欄に掲げる金額の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる割合

地方税法第37条の二 第11項第1号
195万円以下の金額85%
195万円を超え330万円以下の金額80%
330万円を超え695万円以下の金額 70%
695万円を超え900万円以下の金額 67%
900万円を超え1800万円以下の金額 57%
1800万円を超え4000万円以下の金額 50%
4000万円を超える金額 45%
地方税法第37条の二 第11項第1号の表

 基本控除額の場合と同じように、第314条の七に市町村分の特例控除額の条文もあるが省略。道府県の「五分の二」という数字が「五分の三」になっていて、足すと1になるだけ。
 かいつまむと、道府県と市町村合わせて、所得割(住民税の所得比例部分)の20%を上限として、寄付金(2,000円は除く)に対し、課税対象所得額に応じた率を乗じた額を住民税から控除してもらえるということ。

 第11項第1号の表が、あからさまに所得税率の区分と一致しているな(厳密には人的控除差調整額により、所得税率とは区分が変わることがある)。ということで同表に所得税率を書き足してみたのが下表。

総所得の区分住民税の率所得税率合計
195万円以下の金額85%5%90%
195万円を超え330万円以下の金額80%10%90%
330万円を超え695万円以下の金額 70%20%90%
695万円を超え900万円以下の金額 67%23%90%
900万円を超え1800万円以下の金額 57%33%90%
1800万円を超え4000万円以下の金額 50%40%90%
4000万円を超える金額 45%45%90%
地方税法第37条の二第11項第1号の表と所得税法第89条第1項の表の結合

 見事に全ての所得区分で合計90%になった。まとめると、寄付金から2,000円除いた額に対し、

  1. 所得税法に基づき、所得税率を乗じた額を所得から控除
  2. 地方税法に基づき、10%を乗じた額を住民税から控除
  3. 地方税法に基づき、(90%−所得税率)を乗じた額を住民税から控除

 となり、結局1~3の合計は、(寄付金-2,000円)×100%となり、2,000円を除いた寄付金額は減税されて相殺されるということ。世間で言われる「2,000円の自己負担で返礼品ゲット」の内幕はこういうものだった。
 控除を目いっぱい使える寄付金の上限額について整理しておく。上記1~3の控除における寄付金の上限は以下のとおり。

  1. 総所得金額等の40%
  2. 総所得金額等の30%
  3. 所得割の20%

 3.が最も小さな額になるだろう。これを超えると寄付金を控除で相殺しきれなくなって「2,000円の自己負担で返礼品ゲット」 という構図が崩れることになる。

「寄付金から2,000円除いた額に(90%-所得税率)を乗じたものが、所得割の20%以下となること。」という条件を数式にすると以下のとおりとなり、寄付金額の上限額を算出できる。仮に所得税率20%の人の場合は、
 (寄付金-2000)×(90%-20%)≦ 所得割×20%
  寄付金 ≦ 所得割×28.6% + 2000
となる。右辺の所得割にかけられる率は、所得税率が高いほど大きくなり、その結果、寄付金の上限も大きくなるから、所得税率が高い(所得が多い)人ほど高額な返戻品をゲットできる(減税効果が大きい)。

所得控除の話に戻る

 寄付金控除に深入りしすぎて何の記事だったか忘れそうになった。しかも寄付金控除は源泉徴収票に登場しないというズッコケぶり。とにかく社会保険料とか生命保険料等いろんな控除額の合計が、「所得控除の額の合計額」欄に記載されている(雑)。

源泉徴収税額

 つまり所得税額。これの算出が源泉徴収票の結論ともいえる。
「給与所得控除後の金額(調整控除後)」から「所得控除の額の合計額」を差し引いて(それが「課税所得」)、所得税率を乗じることで算出される。

 居住者に対して課する所得税の額は、その年分の課税総所得金額又は課税退職所得金額をそれぞれ次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額(中略)とする。

所得税法第89条

表そのものは所得税法に記載のものより、国税庁の速算表のほうが使いやすい。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え330万円以下の金額 10%97,500円
330万円を超え695万円以下の金額20%427,500円
695万円を超え900万円以下の金額 23%636,000円
900万円を超え1800万円以下の金額 33%1,536,000円
1800万円を超え4000万円以下の金額 40%2,796,000円
4000万円を超える金額 45%4,796,000円
所得税法第89条の表の速算表(国税庁)

 要注意なのは、仮に所得金額が2,000,000円の場合、2,000,000円すべてに上表の税率10%が適用されるのではなく、1,950,000円までは5%、残りの50,000円(2,000,000円-1,950,000円より)に10%が適用される。つまり1,950,000×5%+50,000×10%=102,500円が所得税となる。

 いちいち区分ごとに掛け算して足し上げるのはダルいから速算表があるのであって、使い方は、2,000,000円にそのまま10%を乗じて、そこから「控除額」の97,500円を差し引くと、2,000,000×10%-97,500=102,500円となり、先ほどの計算と合う。

 ということで、自分の源泉徴収票の「給与所得控除後の金額(調整控除後)」から「所得控除の額の合計額」を差し引いて(千円未満切捨て)、上表の税率を乗じて控除額を差し引いたが、微妙に合わない。
 実は↑の計算で算出できたのは「基準所得税額」で、そこに「復興特別所得税」がかかる。

 個人に対して課する復興特別所得税の額は、その個人のその年分の基準所得税額に百分の二・一の税率を乗じて計算した金額とする。

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法 第13条

基準所得税額に復興特別所得税を乗じて100円未満を切り捨てると、ぴったり合った。なんかうれしい。

減税効果

 ふるさと納税の減税効果は前述のとおり、(寄付金額-2,000円)つまり(住民税所得割の20%)である。また、iDeCoも前述のとおり(掛金×所得税率)だが、小規模企業共済等掛金控除は、所得税だけでなく住民税にもある。

 道府県は、所得割の納税義務者が次の各号に掲げる者のいずれかに該当する場合には、それぞれ当該各号に定める金額をその者の前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除するものとする。

 前年中に次に掲げる掛金を支払つた所得割の納税義務者 その支払つた金額の合計額

ロ 確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)第三条第三項第七号の二に規定する企業型年金加入者掛金又は同法第五十五条第二項第四号に規定する個人型年金加入者掛金

地方税法第34条第1項

 つまり(iDeCoの掛金の全額×10%)が住民税から減税される。

まとめ

 iDeCoの掛金の上限は職業・勤務先によって決まっていて、それに住民税率10%と所得税率を乗じたものになる。減税効果はサラリーマンなら年間数万円、自営業なら数十万円と言ったところか。
 ふるさと納税も所得税率により異なるが、年間数万円~十数万円。
どちらもまずまずの減税効果。iDeCoは投資する金融商品によっては元本割れのリスクがあるものの長期分散投資ならまぁ大丈夫じゃない?と言えるし(←自己責任で)、ふるさと納税に至ってはほぼノーリスクなのでやらない手はない、と私は考えます。

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